追悼
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こんばんは。
動物病院で働いていると出会いもあれば別れもありまして。
因果なもので季節の変わり目はどちらかと言うとお別れの方が多くなる節があります。
寒暖差など病気や高齢の動物には些細な変化も堪えるのかもしれません。
3月も多くのお別れがあり、コレばっかりは何度あっても心が何かしら反応します。
そんな中。
私事で恐縮なので、ブログにあげようか迷ったのですが。
実は我が家の愛犬かにまめくんが亡くなったので、今回は彼について書かせてください。私の心の整理のために。
公私混同も甚だしい!!と厳しいお言葉もあるかもしれませんが、全て受け止めますので今回はお許しください。
かにまめと言う名前からインパクトが大きめなのですが、カニヘンダックスなので体格は小振りです。
かにまめは私が大学3年生で外科の研究室に所属してすぐ研究室にやって来ました。まだ仔犬の彼には生まれつき心臓血管系に奇形がありました。
本来お母さん犬のお腹の中では胎盤から臍の緒を伝ってお母さん犬の栄養や酸素を胎児に送ります。胎児は出来るだけ無駄のないように栄養や酸素を血液にのせて全身に運ぶため、使わない臓器はショートカットするように幾つか特殊な血管があります。例えばお腹の中では肺を使った呼吸をしないので、肺に繋がる血管と全身に血液を送るための血管にバイパス(この血管を動脈管と言います)を作り、無駄のない血液の流れを作り出しています。
この血管はお母さんの身体から出ると肺呼吸をしだす事で自然と閉じてしまうようになっています。
しかし極たまに、外の世界に出て来た仔犬の動脈管が開いたまま閉じない事があります。コレを動脈管開存症と言います。
動脈管開存症は放っておくと血液の流れに無駄ができてしまい、本来の血液の流れがうまくいかなくなります。時間が経てば経つほど悪くなり治療しなければ残念ながら長生きできない病気です。
見つけるのは比較的簡単で、聴診器で心臓の異常音を確認して怪しい場合は心臓の超音波検査を行います。
治療法は開胸手術かインターベーション(カテーテル治療)があり、状況によってそのどちらかが行われます。
かにまめくんはその動脈管開存症だったため、循環器の名医と謳われた当時の大学教授にカテーテル手術をしてもらいました。カテーテル手術とはコイルと呼ばれるモール状もモジャモジャを動脈管に置いて来てそこを閉塞させる方法です。手術は無事終わり術後の経過も順調でとても元気でした。
ただ彼にはいくつかのデータを供出してもらうという使命があって治療後はそのまま研究室でお世話することになりました。
そしてその後ご縁があって学生時代に彼を引き取り、保定の練習や血管の位置の確認、身体検査のやり方など、数多くの練習をさせてもらいました。まさに私の学生時代の礎を固めてくれたのは紛れもなくかにまめくんです。
獣医師の卵だった頃から合わせて17年と10ヶ月。振り返ると長い間、一緒に過ごして来ました。
盗み食いして怒られても決して食べ物を離さなかった意固地さや、キッチン下で食べ物の落下を待っていたらまさかの小麦粉が溢れて粉まみれになった情けない顔。ホットカーペットの上で一緒にうたた寝したり、病院スタッフには可愛がってもらって満更でもない顔してたり、でも注射は嫌いで。晩年は粗相も増えましたが、誰にでも懐こく人見知りをしない子でした。
私と楽しかった事も辛かった事も全部傍で見ていてくれた彼は最後まで心臓の薬を必要とする事なく、虹の橋を渡って行きました。
大きな病気をする事もなく大往生でした。
私もみなさんと同じように愛した動物を亡くす事は淋しくて辛くて涙がいっぱいでてきます。そして、その涙の分だけ楽しかった思い出をありがとうと感謝の気持ちで送り出してあげたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
かにまめ ありがとう
あなたの事が大好きだよ
三谷獣医科病院
三谷藍