誤飲事故多発注意報 発令中!!
- 予防
こんにちは。副院長です。
昨日1月20日は一年で一番寒さが厳しい日「大寒」でした。
大寒はお正月の祝い納めの日とされており、お正月の残り物をこの日までに食べる風習があるそうです。
鏡開きをしたお餅も大寒をめどに食べきるために、やたらお餅料理が続いていらっしゃるご家庭も多いのではないでしょうか?
私もお餅は大好物です♪甘い味付けから塩っ辛いの、なんだったら炊き立てのもち米から立ち上る甘い湯気までオールラウンドに大好きです( ´艸`)
…ですが、誤嚥しては大変です‼大口でかぶりつきたい気持ちをぐっとこらえて、よく噛んで飲み込むように心がけています(誤嚥事故にはみなさんくれぐれもご注意を!)
誤嚥 と 誤飲 の違いってなに?
さてここでよく似た言葉【誤嚥】と【誤飲】の違いをおさらいしましょう。
お餅など食べ物が“喉に詰まる”ことは【誤嚥/ごえん】と呼び、嚥下がうまくいかず食べ物が誤って気管などの呼吸器に進入してしまい呼吸を妨げてしまうことを指します。呼吸がうまくできないと瞬時に苦しくなるので咳こんで誤嚥したものを取り除こうと身体が反応します。
これに対し、“食べ物ではないもの(=異物)を食べる(飲み込む)=誤って飲み込む”ことは【誤飲/ごいん】と呼びます。この時食べたものは正常な嚥下がなされているので喉、食道を通って消化管に入ります。この時、飲み込んだものが刺激性の高いものであれば比較的早期に嘔吐することもありますが、丸いプラスチック製品など刺激性の低いものはすぐに吐きださない、または症状のないことも多いです。
そして、年端もいかない子供がなんでも口に入れてしまうのと同じで、子供と同等の知能数を言われる動物たちに対して私たち獣医師が使うことが多いのは断然、誤飲というキーワードです。
紛らわしいですが、病院で説明するときに状態が伝わりやすいので“誤嚥と誤飲の違い”覚えておいて損はないと思います。
ちなみに、腸に詰まるか吐き出すまでの時間が数日から数年を要したり、または吐き出さず腸に流れてしまいます。数年?って嘘みたいですが、これほんとにあった話(後日改めて)。
誤飲しない為の心得
そして新年最初にお伝えしたかった内容がまさにこれ!
犬猫の誤飲事故についてです‼
一言に誤飲と言えどもいろんなパターンがあるので、異物の性状によって、ざっと4種類に分類してみました。
①中毒性異物‥取り込んだ際に成分が溶け出し動物に有害な症状を引き起こす恐れのある異物
可能な限り吐き出させたり中和物質の投与を行うが、中和物質のない場合が多い
人用医薬品、吸殻、農薬、チョコレート、タマネギ、ブドウ、ユリ、イカetc…
②閉塞性異物‥動物に対して一定の大きさを有する消化されない物質で構成された異物
腸管内で詰まると通過障害が起こり開腹手術の適応症となる
玩具、ゴム玉、桃の種、トウモロコシの芯、布、etc…
③ひも状異物‥細長い形状をした異物
舌根部に絡まったり、消化管内で他の異物と絡み合うと蛇腹状に腸管を手繰り寄せて通過障害や管壁の穿孔を引き起こす恐れがある 催吐処置はできない為基本的には開腹手術
紐、ビニール袋、釣り糸、裁縫糸(針付きも有)、布の切れ端etc…
④穿孔性異物‥鋭利な形状をした異物
消化管を移動中に管壁を貫通・穿孔する恐れがある 催吐処置はできない為内視鏡か開腹手術となる
焼き鳥やフランクフルトの串、つまようじ、割り箸、鳥の骨etc…
どうでしょう?ざっとあげてこんな感じ。
そしてそれぞれの種類において少なくとも一つ以上はここ半年で催吐処置、内視鏡検査、開腹手術をもって対処した記憶のあるものばかりです。1日に3件異物誤飲の相談があった日もあります。
異物を誤飲してしまう動物達が悪いのでしょうか?
--答えはノーです。
少し厳しい言葉を敢えて述べさせていただくならば、私は誤飲事故は動物の周りにいる人間が危険を予測して予防策を立てれば回避できる事だと信じています。
以下、診察室で飼い主さんに向けて話す言葉を一部抜粋してご紹介します。
犬猫はなんでも口に入れる習性があるのは自然なことです。
丁度、2才くらいまでの幼児がなんでも口に入れて遊ぶのと同じ行動です。口の届く範囲のものは全て食べられてしまう危険があると思って部屋を片付けてください。
例えば、薬を包装から出すとき誤って床に落としてしまう事はありませんか?恐らくないと言い切れる人は居ないでしょう。床に落とさない事は出来ないけれど、動物の立ち入らない部屋で薬を飲む事はできるはずです。
犬を散歩に連れて行くときのリードの長さ、適切ですか?飼い主さんの距離から犬の口元が見えますか?何か咥えたときに、それを飲み込む前に取り出せますか?それが出来ないリードの長さでは外を散歩をしてはいけません。
美味しそうな匂いや味のついたものに対しては普段とは異なる執着を見せる事が往々にしてあります。まさか、焼き鳥を串ごと犬の口元に近づけては居ませんか?一瞬で串ごと奪い去り、取り上げられる前に急いで丸のみにしようとするのが自然界の鉄則です。
お分りいただけましたか。
うちの子は大丈夫!なんて事は決してありません。
一度味をしめるとそれを覚えてしまう学習能力と、体長の倍は跳躍できる強靭な身体能力で、執拗にそのチャンスを待って居ます。
少しの工夫と飼い主さんが知っておくか居ないかの違いで、誤飲事故が少しでも減ることを願って居ます。
それから一番大切なことを最後にお伝えします。
異物を誤飲をしたのを見かけたり、疑わしい時はすぐに動物病院に連絡してください。摂取後2時間以内ならかなりの確率で麻酔をかけずに催吐処置が可能です。また、来院までの間に家でできる対処方法や家からもってきて貰いたいものをスタッフが冷静にお伝えする事が出来ますので、必ず電話をしてから来院されるようお願いします。
新年早々、塩っ辛い文面になってしまいました。
が!これも必要悪だと思って敢えて言わせていただきましたこと、ご理解戴ければ幸いです。
世の中暗いニュースも多いですが、晴れない雨はないと信じて
皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
今年も三谷獣医科病院をどうぞよろしくお願いいたします。
三谷獣医科病院
副院長 三谷藍